ねぇ?
聞いてるの?
こっちを見て?
【 D R E S S 】
いつもいつも、遠い場所から見つめていた。
深い深い森の中。
遠くに見えるあなたの影。
貴方の隣にはいつもあの娘。
あの娘はアタシなんかと違っていて。
純白のドレスを身に纏い、
そよ風に揺られ、細く強い美しい音色で王子や鳥と囁きあい、
そして傍には華奢な躯を支える王子様。
アタシの傍に貴方は居ない。
だからアタシもあの娘と同じように。
純白のドレスを身に纏い。
森の中で唄を溢し。
貴方をこちらへと手招くの。
だけどやっぱり貴方はアタシの姿に気がつかない。
だからアタシは貴方の元へ…
アタシは知っているの。
あの娘がいなくなれば貴方はあたしのモノだって…
そしてアタシは手招いた。
アタシだけの王子様を。
アタシは傍へ貴方のために。
裾を翻し方陣を。
喉を震わせ災を。
そして貴方をコノ腕に抱きしめる。
それでも貴方の心はあの娘に向いたまま。
だからアタシは昔の御伽噺で聞いた方法で。
‘アタシダケノアナタヲツクル’
銀の斧を横に振り、光華を添えて貴方の喉へと突き立てる。
深く、紅く、美しく熟れた血液があたり一面を赤く染め上げる。
貴方は目を見開き美しい音色の変わりに紅い唱を吹き上げて、
ゆっくりと背中から両手を広げベラドンナの茂みに落ちていく。
美しい、と貴方の暖かい物を全身に浴びながらその姿を見つめていた。
倒れた貴方の傍らに立ちすくみ見つめていると、
貴方の喉から空気が漏れる音。
愛しく貴方を見つめていると唇が音を出さずに言葉を紡いだの。
‘どうして?’
そう紡がれてしまったの。
あら?こんなにも貴方を愛しているのが解らなかったの?
アタシは倒れた貴方の元へ、大きく斧を振りかざし愛しい笑顔を向けて振り下ろしたの。
ゴキッと砕ける音とともに、貴方の首と躯は少し離れて跳ね上がり、
貴方の目からは血の涙。
貴方の口からは血の言葉。
貴方の隣に座り、貴方の首をこの手に抱くの。
温かい熱はアタシの熱に奪われていった。
あたり一面を染めた貴方の赤は黒く光る沢山の実を潤したわ。
アタシはその実のを握るように摘み取り口へと運んだの。
熟れて熟した貴方の実は口の中で濃い愛液の様にアタシの口を犯したの。
甘酸っぱくて、鉄の様に重い貴方の実。
種は噛まずに体内へ…
アタシは残った実をもう一度口へと運び、
そのままもう動かない貴方へ口付けと共に与えたの。
これで貴方はアタシだけの貴方?
ねぇえ?何か言ったらどうなのかしら?
アタシには愛の言葉を呟いてくれないの?
あぁ。そうだった。
もう此処は辺り一面深紅の海で。
純白のドレスは何処にも見えない…
fin?
2005.1.13
制作秘話
元ネタをPCに打ち込んで、飛龍様にアドバイスを頼んだのがそもそものきっかけでした。
そんなに深く考えないで出来た詩でしたが、
語りだしたらなんて深い甘く切ない勘違いな話なんだ!?
こりゃ〜小説の一本でもかけそうw
で、アタシは小説にするのが苦手だったので一通り飛龍に世界観を語り、
小説にしてもらったのでした。
でもアタシも書きたくなって書いてみた次第。
並ぶの怖いw
女の子が実は魔女だ設定とか、
本当に色々出てきました。
あえて女の子には触れてないので貴方の思うように描いてあげてください。
何よりも恐ろしいのは愛。
何よりも美しいのは愛。
怖いですね、女の嫉妬w